【コラム】コロナで一時帰国、それでもめげずに、再度ジャマイカで日本語教育

今回は、ジャマイカへJICA海外協力隊員として派遣され、コロナで待避帰国をせざるをえなかったにも関わらず、再度ジャマイカで日本語教育に励む現役隊員 武田美樹子さんからのコラムです。是非お読みください。

1年前に担当した2年生と(2023年11月)

こんにちは。武田美樹子と申します。

JICA海外協力隊・日本語教育隊員として、ジャマイカの西インド諸島大学(University of the West Indies, UWI)で日本語を教えています。2022 年 11 月に派遣され、あと約1ヶ月で帰任です。実は2度目の派遣で、最初の派遣は2020年1月。しかし、コロナのため3か月で退避帰国。2年半以上、待って待って待って、やっとジャマイカに戻ってきました。

UWIの日本語コースは人文教育学部現代言語文学科に属しており、2008 年から卒業単位科目に、2014年からは副専攻科目になりました。日本語を履修する学生は現在約120人います。日本語コースは週6コマ(6時間)で、3年間履修できます。現在はジャマイカ人女性講師と日本人女性講師と3人で教えています。

UWIで日本語を学ぶ学生の動機のほとんどはアニメやマンガなどの日本のポップカルチャーです。インターネットの普及で、世界が「小さく」なりました。アニメやマンガなどの日本の文化に興味を持つ人達がより増えたり、多くの外国人が日本に旅行に来るようになったりなど、日本・日本文化へのより深い理解や体験欲望が増えたのは、インターネットのおかげだと思います。とはいえ、日本からはるか遠いカリブの島国で、3年間、週6時間も日本語を勉強している。その熱意と頑張り。私は彼らをシンプルにリスペクト!しています。していますが、学生25人いる担当のクラスで、授業が始まって10分経っても教室にいるのは半分以下だったり、雨の日だと時間通りに誰も来ない、とかもあります。まあ、毎日一生懸命とはいかないようですが、彼らなりにとても頑張っています・・・(苦笑)。

現在担当している2年生の教室にて(2024年10月)

私がイメージしているジャマイカ人は陽気で気さくで、実際にそういう人たちに出会う事が多いです。しかし、私が教えている学生たちは、しょっちゅう“恥ずかしがり屋”です。「昨日の宿題は『わたしの特技』でしたね。発表してください。」と問いかけても、し~~ん。誰も挙手しない。え~?! もっと積極的にわあわあ話してくるもんじゃないの? 日本人みたいじゃん。最初は驚きました。ただ、恥ずかしい雰囲気が解けると、発言が徐々に活発になります。なので、言いたい気持ちにさせるのが私の仕事でしょうか。

大学での履修科目ですから、コースアウトラインを設定して、それに沿って授業をして、試験を行って、成績をつけなければいけない。ですが、時間をやりくりして、オンラインで日本とつないで交流したり、ジャマイカ在住の日本人をゲストにお迎えしたり、私の大好きな歌舞伎や落語をプレゼンしたり、生け花やかるたなどの体験授業なども取りいれるようにしています。

半年前に担当した3年生と 生け花体験(2024年4月)

一方で、学生たちから、たくさん教えてもらっています。おすすめのジャマイカ音楽やアフリカ音楽。いつも見ているYouTubeやTikTok。渋いテイストのラジオ局も教えてもらいました。そして、最近のアニメ。J-POPも(K-POPも)。私は約25年間アニメ業界に勤めていたのでアニメは知っているつもりでしたが、ジャマイカの学生たちは最近のアニメをほぼリアルタイムでフォローしている。やっぱりインターネットはスゴい!です。それから、パトワ語のレッスンもしてくれました。そして、注意やらアドバイスもしてくれます。「先生、リュックがあいています。気をつけてください」とか。そして、彼らから「今の若者」についても色々と学びました。私にとっては貴重な宝物です。

ダンスパフォーマンス前のJapan Clubのメンバー(2024年4月 Modern Languages and Literatures Dayにて)

昨年12月、キングストンを含む5県で外務省の危険度レベルがレベル2に引き上げられ、JICAのルールによりUWIへの日本語教育隊員の派遣が中止となりました。同僚の日本語講師2人がいるので基本的には安心ですが、1996年以来半世紀以上も派遣し続けてきたJICAのUWIへの隊員派遣が途切れるのはとても残念です。2年間という短い時間とはいえ、貴重な体験を得られた事を感謝するとともに、再びUWIに隊員が派遣される日が来ることを心から願っています。