身体障害者のアントニー君と行う障害者支援活動

身体障害者のアントニー君とともに

今回はNPO法人LINK UP JAJA(リンコップジャジャ)代表であり、現在JICAのボランティアとしてジャマイカで障害者支援活動を行う永村 夏美さんからの投稿です。

是非ご覧ください。

【コラム】

私は2019年にジャマイカの北海岸を臨むセントアン県にJICAボランティア・環境教育隊員として派遣された。2020年3月にコロナウイルス感染拡大の影響で緊急帰国となり、その後NPO法人LINK UP JAJA(リンコップジャジャ)を立ち上げ、自費でジャマイカに戻って障害者支援等の活動を開始した。2023年1月にJICAボランティアとして再派遣が叶い、現在はボランティア業務と法人のプロジェクトを両立して活動している。

昨年の夏読売テレビ系のテレビ番組「グッと!地球便」にジャマイカにおける障害者支援の活動を取り上げてもらった。その時に視聴者の心をぐっと掴んだのが身体障害者のアントニーだった。身体障害を持って生まれた幼いアントニーは療育施設で育ち、18歳で施設を出て以来、ストリートでカンパを募るなどしてお金を稼ぎ、自立生活を送っている。ありとあらゆるイベントや観光地を訪れ、笑顔で道行く人に話しかけるアントニーはちょっとした有名人で、どこへ行っても地元の人がジャマイカの言葉で「ワーグワン(やぁ、元気)?」と挨拶してくれる。そのアントニーがテレビ取材の一環で初めてさをり織りクラスに来たのは2023年の春。生まれつき曲がった手と細い足を器用に使って織る彼の姿に、他の参加者も見入った。「この機械が家にあったら、僕は織物を売って生計を立てて、物乞いをやめたい」と言ったアントニーの一言が視聴者の心を掴み、たくさんの反響を頂いた。

2024年10月、近所にある小学校の4Hクラブが主催したファンドレイジングイベントがあり、身体障害者のアントニーを誘ってさをり織りの体験出店をした。子どもからひとり100ジャマイカドル(約100円)もらって体験してもらい、みんなが織った完成品2点は学校に展示品としてプレゼントした。私も時々手を出し口を出ししていたが、子どものアシストはアントニーに大方任せられた。アントニーが子どもに「なんで手が曲がっているの?」と聞かれては「これは生まれつき」と説明している姿を隣で面白く眺めながら、アントニーと一緒に学校訪問をすることの意味を考えていた。マイノリティーであるアジア人の私が学校に行くだけで子どもは珍しくて大はしゃぎしているが、身体障害者のアントニーを連れて行くとまたちょっと変わった人が増えて、グローバル、インクルーシブ、文化交流、国際交流、障害者理解、環境教育、情操教育と、色んな要素が混ざってより一層楽しい。

売上金およそ3000円はアントニーの交通費としてお渡しした。交通費が1500円ほどかかるので日当としては安すぎるが、アントニー本人は「楽しかった!またやりたいし、こういうイベントでもっとお金を稼ぎたい」とやる気が出たようだった。これからもアントニーをはじめジャマイカの障害を持つ人たちの日中活動の場、しごとづくりに取り組み、織物やアートを通して障害者自身が社会にアドボケイトすることでジャマイカの社会が一歩でもインクルーシブな社会に近づくよう活動を続けていく。

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