【コラム】ジャマイカ政府ジェンダー局へ派遣 国連ではジャマイカと日本は隣同士
皆さん、こんにちは。連日猛暑が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、本記事ではコラム第4弾をお届けします。今回は、青年海外協力隊時代にジャマイカ政府ジェンダー局でご活躍された秋田美央さんです。
とても興味深い内容となっております。ぜひご一読ください。
コラム
「勉強ができる男子はもてない。」カリブの高校生の統一模試で1位を取ったというジャマイカ人の男子高校生が言った一言を今でも覚えています。「勉強ができたら、将来良い仕事に就ける可能性が高いから、女の子にもてるんじゃないの」と私が問うたところ、「勉強ができても、ジャマイカ国内で就ける仕事はせいぜい給料の悪い政府の仕事。ジャマイカで一番稼いでいて、女性にもてるのは運動選手か、DJか、詐欺師だから!」と冗談半分に返されました。青年海外協力隊員としてジャマイカ政府のジェンダー局に派遣された私に、勉強ができるのはジャマイカでは「男らしく」ないのだと、興味深いことを教えてくれたのは職場に夏期インターンに来ていたジャマイカ屈指の秀才(16歳)でした。
ジャマイカ政府(文化・ジェンダー・娯楽・スポーツ省)のジェンダー局は、政府のジェンダー平等政策の策定と、ジェンダーに基づく暴力(GBV)への対応等、実際のケースワーク、GBVに関する地域での意識啓発活動を行っており、特に、男性への介入活動(intervention)を行っているのが特徴的かつ先進的でした。ジャマイカでは男性から女性に対するジェンダーに基づく暴力や、子どもを作っても父親とならないケースが多く、「有害な男らしさ(toxic masculinity)」がそれらの行動を助長しているとの認識の下、ジェンダー局の中に「男性デスク」の担当官の男性を配置し、地域で成人から青年まで働きかけを行っていました。私は、意識系発の講義をする際、「男らしさ・女らしさ」の規範は社会・文化的に作られるという例として、上記の、勉強ができるのは男らしいのか、どうなのかという話(統計的にも、ジャマイカでは女性の方が男性より大学進学率が高いので、勉強ができるのは「女らしい」ということになるのかもしれません)や、日本では、甘味が「女らしさ」と結びつけられ、一人で甘い物のお店に入るのをためらう高齢男性もいます、という話をして、「ウソー!?」という(有り難い)大きな反応を頂いておりました。
(グリーナー紙に特集して頂いた際の記事 https://jamaica-gleaner.com/article/art-leisure/20180318/lessons-masculine-behaviour)
上述の文化・ジェンダー・娯楽・スポーツ省は大臣、次官、私の上司である局長とも全員女性で、私の人生において、女性のリーダーシップについて最も、身近に実例を学ばせて頂き、また、多くのロールモデルを得た2年間でもありました。
私は2020年から現在、ニューヨークの国連日本政府代表部でジェンダーの担当官として働いているのですが、(https://www.un.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kaninnokoe_akita_mio.html)、一つ大変嬉しいことは、日本とジャマイカは国連では、アルファベット順で席が隣であることです。ジャマイカ国連代表部の様々な外交官と隣の席に座る度に、Jamaica Land We Love!(国歌の一節)と言って意気投合できることは大きな財産です。また、ジャマイカ代表部が独立記念日に、各国代表部に対してジャマイカに関するオンラインクイズを行った際、私はトリニダード・トバゴ代表部の担当官と共に、ぶっちぎりの一位を勝ち取り、賞としてWray & Nephewのラムをジャマイカ代表部から頂きました。それ以来、CARICOMや他の国の代表部の外交官からも、カリブの息がかかった(よく踊る)日本人がいるとして、覚えて頂いています。