【コラム】ジャマイカでの学びと異文化を通じた自己認知
皆さん、こんにちは。朝晩の気温がぐっと下がり、徐々に過ごしやすくなってきましたね。
さて、本記事ではコラム第5弾をお届けします。今回は、ジャマイカに本部を置く国際海底機構で活躍している三城希雄志さんです。
三城流「調和の世界の作り方」を学べる興味深い内容となっております。ぜひご一読ください。
コラム
2014年にジャマイカに来てから、気づけば10年が経過しようとしています。皆様、お元気にお過ごしでしょうか。ジャマイカでの10年間は生活や仕事を通して想像以上にたくさんの経験をしてきたように思います。ここでは、ジャマイカで貢献してきたことや活動紹介というよりもジャマイカでの生活から学ぶ、国間それぞれの文化観および世界観に繋げたテーマで書くことができればと思います。
ジャマイカは、私が初めて1年以上住んだ国であり、第2の故郷と言えるほどに「戻る」という言葉を使うようになりました。当初、レゲエ音楽や南国、カリブ海に特別な興味があったわけではありませんでしたが、振り返れば、ただ未知のものを見てみたいという好奇心が私をここまで駆り立てたのだと思います。
ジャマイカとの出会いは、JICA青年海外協力隊員(専門は土木)として、西インド諸島大学内にあるモナ地質情報科学研究所での活動でした。海洋専門を生かしジャマイカ沿岸域の海洋環境に関する研究支援に携わり、活動内容としては日本で行っていた業務の延長線上でした。活動自体は比較的スムーズに進めるものと考えておりましたが、言語の壁やなまり、文化差異が活動の難しさを感じさせることも多くありました。
専門的な活動は非常に興味深く、多くの学びがありましたが、隊員期間中に最も強く感じたのは専門知識以外の点にもあり他国の人々との関わり方やどのように活動と人間関係を両立させていくかという点にありました。そこでは、言葉を超えた形而上の見えない障害を乗越え人と心を通わせることの重要性を、この活動を通じて深く学んだと思います。
今振り返ると、『国や人を理解すること』、『言語を超えた価値観を共有すること』の大切さに気づかされたと思います。それがそろったときに、初めて同じ立場に立ち、同じ方向性を共有できると感じました。
隊員任期終了後、ジャマイカに本部を置く国際海底機構で業務に携わっておりますが、当機構は国連海洋法条約のもとに設立されジャマイカを含む168か国およびヨーロッパ連合を含む締約国で構成されています。私もこの職場でまもなく8年目を迎えようとしていますが、ジャマイカの環境に慣れ、多様な国籍の方々と仕事ができる機会に触れながら地域と世界、それぞれを行き来するようなスケールで業務をしています。
振り返ると、このような『人や環境を通じて学んだ感覚』はいかに『それぞれの文化、人を尊重していくか』あるいは『その重要さを認識したか』という概念に基づくものだと思います。
話は少しそれるかもしれませんが、新しい環境に長く身を置くことで、最も学べることの一つは外国の文化に触れることで母国に目を向けることだと考えています。その結果、私自身について考えるきっかけとなり、外交的・政策的な面で自ら何ができるかを現地目線で能動的に考える機会になりました。
最後になりますが、私にとって旅行は単なる物理的な移動ではなく、新しい環境とその深い理解を通じた内的な旅で自身(母国)を見つめる機会であるかと思います。その延長線上として自身と他者をつないでいけるものと思います。「世界は自分の鏡」であることを交え、ジャマイカ、日本、そして世界がそれぞれの文化多様性の重要性を認識し、その上で相互理解を通じた交流がさらに進展していくことを願います。