【コラム】西インド諸島大学の大学院卒 佐藤鉄平さん

皆さん、こんにちは。桜が満開になり、春本番を感じる季節がやってきましたね。

さて、本記事ではコラム第2弾をお届けします。今回は、西インド諸島大学の大学院にて文化研究を専攻された佐藤鉄平さんです。

大学院での学びやラスタ・サーファーとの関わりを通して得られた経験を語られており、大変興味深い内容となっています。

コラム

サンサンと輝く太陽と美しい海、そしてReggae(レゲエ)発祥の地ジャマイカ。私は約5年間のジャマイカ生活をとおして沢山の事を学んだ。このコラムでは、ジャマイカ・サーフィンのメッカBull Bay(ブル・ベイ)に所在するJamnesia Surf Camp(ジャムネジア・サーフ・キャンプ)のオーナーであり、ジャマイカ・サーフィンのパイオニア、Billy Wilmot(ビリー・ウィルモット、通称アンクル・ビリー)から学んだ人生の教訓についてお話しします。

なぜジャマイカへ?以前、日本の音楽会社に勤め、ジャマイカ人ミュージシャンのコンサートを製作したことがあった。彼らの爆発的なパフォーマンスと個性に大変驚き、日本人とは全く異なる気質は魅力的で、どんな環境で暮らしているのかとても興味があった。ひょんなことから、友人にJICA海外協力隊を勧められ、思い切って応募したところ合格し、第一志望のジャマイカに派遣された。派遣期間満了後、Kingston(キングストン)にある大学院に進み、文化理論を学びながらジャマイカの文化について研究した。謙虚で同調的な日本人とは違い、表現的で自主的なジャマイカ人はとてもフレンドリーで、よそ者も快く受け入れてくれる。Jamnesiaは、世界中からサーファーが集まり、ローカル・サーファーも外国人サーファーもお互いをリスペクトする場所。ジャマイカは比較的コンスタントに良い波があり、人混みがなく、サーファーにとってはパラダイスだ。私は大学の寮には住まずBull Bayに一部屋を借り、「第二の学校」Jamnesiaによく通い、アンクル・ビリーから沢山の事を教えてもらった。

アンクル・ビリーは、長身で姿勢が良く、白髪のドレッドとモジャモジャの髭が生えたラスタ・サーファー。一見怖そうだが、子供のような眼差しを持ち、博識で一度喋り出したら止まらない。サーフィン以外にも、ジャマイカの文化や歴史、そして人生の教訓についても話してくれた。彼はJamnesiaのオーナーであり、またJamaica Surfing Association(ジャマイカ・サーフィン協会)を設立し、次世代のサーファーが世界に挑戦するための礎を築いたパイオニア。Icah Wilmot(アイカ・ウィルモット), Elishama Beckford(エリシャマ・ベックフォード), Ivah Wilmot(アイバ・ウィルモット)は、現在、世界で活躍するプロサーファーだ。 また、アンクル・ビリーはミュージシャンの一面も持っており、1988年に日本で開催されたReggae SunSplash Festival(レゲエ・サンスプラッシュ・フェスティバル)にMystic Revealers(ミスティック・リビーラーズ)のリードボーカルとして出演し、知る人ぞ知るジャマイカを代表するミュージシャンだ。サーファーの育成だけにとどまらず、若手のミュージシャンのためにJamnesia sessions(ジャムネジア・セッションズ)というオープン・マイクのライブをオーガナイズしている。Chronixx(クロニクス), Protoje(プロトジェ), Jah9(ジャーナイン)等数々のビッグスターはここから世界へ羽ばたいていった。

Jamnesiaから歩いて5分程の場所にあるサーフポイントCopa(コパ)はローカル・サーファーのホームで、うねりが強い時はオーバーヘッドからダブルオーバーヘッド(6〜12フィート)の波が押し寄せる。The Day(ザ・デイ(波が大きい日はそう呼ぶ))の日はプロサーファーでも気合いを入れて海に入る。ビーチから見るとサイズ感があまりわからないが、海に入れば圧倒的な波に息を呑むと同時にWipeout(ワイプアウト(波に乗り損ね巻かれること))したら…と恐怖を感じる。ビギナーの私にアンクル・ビリーがよく言っていたのは、「大きい波が来た時こそパニックにならず、深呼吸をしてドンと構えろ。Wipeoutした時のことは考えず、今まで練習してきた事を思い出し、その通りに波に乗ればいい。トライしないと何も始まらないぞ、トライし続ける事が大事なんだ」。シンプルだけど心に残る言葉はきっと自分自身にも言い聞かせてきた事だろうし、活躍しているプロサーファーやミュージシャンの背中を後押ししたに違いない。長い人生の中で大舞台に立つときが必ずくる。そんな時こそ深呼吸をして心を落ち着かせ、失敗を恐れず、目標に向かって続けてきた事を実践しよう。きっとその先には今までに経験したことのない素晴らしい世界が待っているはず。

2018 Makka Pro(クリックしたら記事が読めます)
アマチュア部門で2位。1位は当時イースト・ジャパニーズで働いていたトウマ君
②Uncle Billy@Jamnesia Sessions (Left)
③Copa